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run out the clock:時間稼ぎをする

更新日:12月10日

He ran out the clock on at least some of the criminal cases against him through appeals and delays.
「彼(ドナルド・トランプ次期米国大統領)は彼に対して提起された少なくともいくつかの刑事訴訟で上訴や遅延行為をして時間稼ぎをした

(Zoe Tillman, 'New administration's agenda set to collide with slow pace of U.S. legal system' The Japan Times Weekend, November 30-December 1, 2024, p. 5)


 

今回取り上げる表現はrun outという句動詞を知っていれば意味は類推できそうですが、よく見るとこの句動詞のよく知られている用法とは違うことにお気づきでしょうか。


(1) run outという句動詞には「(お金や時間・食糧などの蓄え)がなくなる・を使い果たす」という意味があることはよく知られています。


ちなみにこのoutをshortにおきかえたrun shortという表現も似た意味となりますが、run outではお金や時間などが完全になくなるのに対し、run shortでは「0でなく少しは残るものの十分な量ではなく足りない」といったやや異なるニュアンスになります。


以下の例文のように使われるお金や時間などが主語にくる場合はそのままrun out/shortの形となりますが(主語や時制に応じてrunという動詞は変化します)、「人」が主語にくる場合はrun out/short of (money, time, ...)という具合に前置詞のofを伴ってお金や時間など使われるものが後に続きます。


¶Our money is running out. = We are running out of money.(私たちの金は底をつきかけている)(ジーニアス英和辞典)


(2) 今回の表現であるrun out the clockも上記のrun outの用法と似ていますが、「人」が主語であるにもかかわらずrun outの後に前置詞のofを伴わず直接the clockという目的語をとっています。


実はこれは (1) のrun outの用法とは異なり、20世紀半ばごろにスポーツの世界で生まれたアメリカ英語の表現で、サッカーなどでリードしているチームがボールをキープして時間をつぶし、相手チームに点を入れさせないようにすることをいいます。


ここから転じて、スポーツ以外の場面でも自らの優位を保つために時間をできるだけ多く使う、つまり時間稼ぎをすることを意味するようになりました。


もともとrun outという句動詞には、(1) に述べた直接目的語をとらない(自動詞)用法とは別に、直接the timeを目的語にとって「一定の時間を経過させる」という意味を表す(他動詞)用法があり(オックスフォード英語辞典)、今回の表現もこのrun outの用法と関連して生じたものであると考えられます。


(3) なお、run out the clockという表現のバリエーションとして、run down the clock, kill the clockなども同様の意味となります。


run downという句動詞には、主にスポーツの世界で「タイマーや時計が残り時間をカウントダウン(秒読み)する」という意味を表す(自動詞)用法がありますが(オックスフォード英語辞典)、この用法から「時間稼ぎをして時計の針を進めさせる」というニュアンスでrun down the clockという(他動詞)用法が生じたものと考えられます。


また、待ち時間をつぶすことをインフォーマルな表現でkill timeといいますが、時間稼ぎをするという意味のkill the clockという表現もこれに類するものといえます。そのほかにもdrain the clock, eat the clockも同じ意味となります。




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